GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代
「GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代」という本が話題になっているので読んでみました。「ギブ&テイク」はよく聞く言葉ですが、こちらの本では人を3つのタイプに分けて「ギブ・アンド・テイク」を説明しています。また、「Give and Give(ギブ・アンド・ギブ)」の危険性についても語られており興味深い一冊でした。
「ギブ&テイク」とは、この世の中を形成する当たりまえの原理原則に思える。しかしこれからの時代、その“常識”が果た して通用するのかどうか―著者の問題提起が、アメリカで大論議を巻き起こしている。世界No.1 ビジネス・スクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」史上最年少終身教授、待望のデビュー作!!
著者の「Adam Grant(アダム・グラント)」は「組織心理学」の学者
著者の「アダム・グラント」は、世界No.1 ビジネス・スクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」史上最年少終身教授だそうです。現在31歳と若く「仕事を楽しむため」や「働くときのモチベーションアップなど」仕事をデザインする「組織心理学」が専門だそうです。
大学院生のころに行った実験で一躍名を馳せる
アダム・グラントがまだ大学院生時代に行ったコールセンターの実験がとても注目を集めたそうです。
資金集めを目的とした大学のコールセンターで調査を実施した。コールセンターは満足度の低い職場として知られている。同じことの繰り返しだし、ひどい言葉を投げかけられることもあるので精神的につらい仕事だ。
グラントは、センターの主目的のひとつは奨学金の資金集めだったため、その奨学金で助かった、という学生を連れてきた。電話をかけていた人たちは10分休憩を取り、この学生の話に耳を傾けた。学生は奨学金のおかげで人生が変わったこと、理想の職場で働くことになりわくわくしていることなどを話した。
結果はグラントさえ驚くようなものだった。学生が話をした1ヵ月後、スタッフの電話対応時間は142%も増加し、集まった資金は171%も増えていたのだ。
確かに毎日同じことの繰り返しで、なおかつその人のために行っているのにひどい言葉を投げかけられると、やる気どころか自身の仕事が嫌になってしまいます。しかしそうではない人たちもいて、奨学金で助かった話を聞くことにより人生が変わるほど役に立ったことを実感できると、自身の仕事に誇りを持てたり、また未来の学生たちに向けてぐっとやる気がでてきますね。
人を3つのタイプに分けて分析
本書では人間を3つのタイプに分けて説明しています。
- ギバー(人に惜しみなく与える人)
- テイカ─ (真っ先に自分の利益を優先させる人)
- マッチャー (損得のバランスを考える人)
ギバー(人に惜しみなく与える人)
「ギバー」は、ギブ&テイクの関係を相手の利益になるように持っていく人、受け取る以上に相手に与えようする人だそうです。自分中心に考えるのではなく、他人中心に物事を考える。相手との価値を交換するのではなく関係性全体の価値の向上を目指す人。
テイカ─ (真っ先に自分の利益を優先させる人)
反対に「テイカー」はギブ&テイクの関係を自分の利益になるように持っていく人、相手よりも自分の利益を優先し相手よりもより多く受け取ろうとする人だそうです。
マッチャー (損得のバランスを考える人)
「マッチャー」はギブ&テイクの関係に対して、与えることと、受け取ることのバランスを取ろうとし「公平」という観点に基いて行動する人だそうです。なので人を助けたりする時には必ず見返りを求めるます。会社でのほとんどの人々が「マッチャー」であるようです。
タイプは常に変化する
「ギバー」「テイカー」「マッチャー」のタイプは一人の人間が一つだけ持っているのはないそうです。自身のその時の役割や状況によって「タイプ」が変化するそうです。自身の家族や親しい友人などには「ギバー」となるのに対して、会社などの職場では「テイカー」や「マッチャー」になったりするそうです。
成功のカギは人を助けることだが...
自己啓発や成功法則などの本には「与えること」の大切さが必ずというほど書かれています。本書でも大量の調査の結果、長期的に成功するのは「ギバー」であるそうですが、また失敗者が多いのも「ギバー」であるそうです。
「成功するギバー」と「失敗するギバー」2つのタイプの違い
成功するギバーと失敗するギバーの違いについてはこう書かれています。
- 成功するギバーは「他者指向性タイプ」
- 失敗するギバーは「自己犠牲タイプ」
失敗するギバー「自己犠牲タイプ」
「自己犠牲タイプ」とは他者利益を追求し自己利益を怠るタイプ。自分を犠牲にして惜しみなく与えていけば自身がすぐに疲弊しボロボロになってしまう。また、周囲に騙されやすくなり自らも燃え尽きてしまうケースが多いそうです。犯罪の被害に遭いやすいのもこのタイプのようです。
成功するギバー「他者指向性タイプ」
「他者指向タイプ」とは他人に与えることが自身の利益や目標の実現にもつながるタイプ。特に会社などでは仲間にアドバイスを与える事は、自身の時間が無くなる部分もありますが、会社全体やプロジェクトのチームなどで見るとプラスだったりすること。本書では、
「他者志向」になるということは、受け取るより多くを与えるが、決して自分の利益は見失わないことだ。それを指針に「いつ、どこで、どのように、誰に与えるか」を決めることなのだ。
と書かれています。
人は「利己心」と「思いやり」の両方を原動力にする時、もっとも成功できる
人は「利己心」と「思いやり」の両方を原動力にする時、もっとも成功できる。他者への関心と自分への関心が結びつけば、ギバーは、燃え尽きることがなくなり、成功しやすくなるのだ。
確かに自分の好きな事や興味のあること、得意なことを周りに教えたり伝えたりすることは、楽しみながら教えることができます。さらにより伝えたいと思ったり、伝えながら新たな発見があったりするので「寝る時間を忘れて」ではないですが、燃え尽きることはないと思いました。
ビジネスは必ずしも「ゼロサムゲーム」ではない
ゼロサムゲームとは、以下のことで
ゲームのルールによる類別の一。ゲーム理論の用語。
簡単に言えば、参加者の得点と失点の総和(サム)が零(ゼロ)になるゲーム。
例えばプレイヤーが二人の場合、プレイヤーAが+10点ならば、プレイヤーBは-10点になる。他、将棋のような純粋な対戦ゲームもこれに含まれる。
転じて、拡大余地のない市場における競争(シェア争い)であるとか、「パイの分け前を決める」とか、そういったことを指す語としても用いられる。
要するに、一方が勝つと一方が必ず負ける事になります。
例えば市場全体として需要が決まっている場合、誰かがあるお店で買い物をすると、他のお店がその分売れなくなります。
新しい価値観を持ち込み、全体を拡大する
ただし著者によると、限られた市場ではその中でのパイの奪い合いになりますが、その市場に新しい価値を創造し市場全体のパイを拡大することができれば、全ての人々が現状よりもより多くの利益を受け取れることになるのを説いています。
また、会社内においてもお互いに助けあうことで、会社全体やチーム全体のレベルアップやパフォーマンスアップに繋がり、共に利益(メリット)を増やせる「Win-Win(ウィンウィン)の関係」となります。
成功するギバーの具体例が豊富
成功するギバーになるためにはどうすればよいのか、その事例として、成功している企業や政治家などのたくさんの具体例にあげ論理的に説明しているのが本書の特徴です。また、マッキンゼーも取り上げてアダム・クラントに関する記事を掲載したそうです。
他にも体系的にコミュニケーションの取り方などが記載されています
本書ではそのほかにも説明されてあり
- 100時間ルール
- コミュニケーションの取り方
- 相手との協力の仕方
- ネットワークの構築方法
- 影響力の与え方
など体系的に組み立てられており非常に理解しやくなっているのが良い点だと思います。
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代
[目次]
- 1 あなたは、まだ「ギブ&テイク」で人生を決めているのか―いま「与える人」こそ、幸せな成功者となる
- 2 「名刺ファイル」と「フェイスブック」を見直せ―「ゆるいつながり」という人脈づくり
- 3 チームの総力を活かせる人―利益の「パイ」を大きく増やす働き方
- 4 荒野で“ダイヤモンド”を見つける法―可能性を掘り出し、精鋭たちを 育てる
- 5 「パワーレス」の時代がはじまった―「強いリーダーシップ」より「影響力」
- 6 「与える人」が気をつけなければな らないこと―「成功するギバー」の、したたかな行動戦略
- 7 気づかいが報われる人、人に利用されるだけの人―「いい人」だけでは絶対に成功できない
- 8 人を動かし、夢をかなえる「ギブの輪」―未来を変える「因果応報」のルール
- 9 「成功への道」を切り拓く人たち―あとに続くのは誰だ
著者「グランド・アダム」
グラント,アダム(Grant,Adam)
組織心理学者。1981年生まれ。同大学史上最年少の終身教授
『フォーチュン』誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」、『ビジネスウィーク』誌の「Favorite Professors」に選ばれるなど、受賞歴多数。「グーグル」「IBM」「ゴールドマンサックス」などの一流企業や組織で、コンサルティングおよび講演活動も精力的に行なう